呼吸器外来について
呼吸器内科は、呼吸器系の疾患および病気の診断、治療、予防を専門とする医学の分野です。
呼吸器系は、鼻、喉、気管、肺などの器官からなり、呼吸に関する機能を担っています。
受診の目安
- 慢性的な呼吸器症状
長期間にわたって咳や喘息、呼吸困難などの症状が続いている場合は、呼吸器内科を受診することが適切です。特に、症状が重篤化したり、日常生活に支障をきたしている場合は、早めの受診が必要です。 - 喘息や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などの診断または治療中
喘息やCOPDなどの慢性的な呼吸器疾患を診断されている場合は、定期的な受診が必要です。医師の指示に従い、診察や検査を受けることが重要です。 - 喫煙歴や環境的なリスク要因
長期間の喫煙歴がある場合や、長期間にわたって有害な環境に曝露されている場合は、呼吸器の検査や評価が推奨されます。肺がんや慢性閉塞性肺疾患の早期発見や予防のために、定期的に受診することが重要です。 - 急激な呼吸器症状の出現
急性の呼吸器症状(突然の発熱、咳、呼吸困難など)が出現した場合は、早急に呼吸器内科を受診することが必要です。これらの症状は、肺炎や気管支炎などの重篤な疾患の可能性を示唆することがあります。
※呼吸器外来は、毎週火曜日に診察をおこなっています。
主な疾患
- 喘息
- 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
- 間質性肺疾患
- 肺がん
- 気管支炎
- 睡眠時無呼吸症候群
喘息
喘息は、通常、気管支の内側の壁が腫れたり狭くなったりして、呼吸の流れを妨げる炎症が起こることで特徴づけられます。
この炎症は、血管の拡張と浮腫(むくみ)を引き起こし、気管支のスムーズな通気を阻害します。
これにより、呼吸が難しくなり、喘鳴音、咳、胸の圧迫感などの症状が現れることがあります。
喘息の原因
一般的な原因
喘息の原因はいくつかありますが、最も一般的な原因はアレルギー反応です。
一部の人々は特定の物質に対して過敏な免疫反応を示し、それにより気管支の炎症が引き起こされます。
アレルギー誘発物質としては、花粉、ハウスダスト、ダニ、ペットの毛などがあります。
その他の原因
- 空気汚染
- 喫煙
- 感染症
- 遺伝的要因 など
喘息の症状
軽度から中等度の喘息
- 呼吸困難や息切れ感
特に運動や労働時、冷たい空気やアレルゲンにさらされた場合に発生することが多いです。 - 喘鳴音
吸気や呼気時に聞こえる高音の呼吸音のことです。 - 咳
特に夜間や早朝に頻繁に現れます。 - 息苦しさや胸の圧迫感
- 疲労感や体力の低下
重度の喘息
- 呼吸困難の増加
日常生活の活動が制限され、少しの動作でも呼吸が苦しくなります。 - 喘鳴音の増大
呼吸時により大きく、持続的な喘鳴音が聞こえます。 - 喘息発作の頻度や重症度の増加
発作が頻繁に起こり、通常の治療では症状が劇的に改善しないことがあります。 - 一般的な活動における制限
日常生活の活動や運動がほぼ不可能になります。
機器による酸素供給が必要になる場合もあります。
喘息の治療法
- 喘息のコントロール薬
ステロイドや気管支拡張剤などの薬物が使われます。これらは炎症を抑え、気道を拡張する効果があります。 - 応急処置薬
喘息の発作が起きた場合、速効性の気管支拡張剤を使用して症状を緩和することがあります。 - トリガーの回避
アレルギー反応を引き起こすものを避けることが重要です。これにはハウスダストの除去やペットのアレルギー対策などが含まれます。 - 適切な運動
適度な運動は喘息の管理に役立ちますが、個々の病態によって推奨される運動内容は異なる場合があります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
従来、慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称です。
たばこの煙を主とする有害物質を長期に吸入することで肺の中の気管支に炎症が起きて、咳や痰が出たり、気管支が細くなることによって空気の流れが低下します。
歩行時や階段昇降など、身体を動かしたときに息切れを感じる労作時呼吸困難や、慢性の咳や痰が特徴的な症状です。
長期の喫煙歴があり慢性的に咳、痰、労作時呼吸困難があればCOPDが疑われます。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の症状
- 咳と痰
初期の頃は透明な痰がからんだ軽い咳が出ます。通常は朝、起床直後に悪化しますが、一日中続くこともあります。
COPDが進行すると肺炎などの肺感染症が頻繁に発生するようになり、その間は咳の回数が増え、痰の量も多くなります。また、痰の色は黄色や緑色を帯びた色に変わります。 - 呼吸困難
坂道や階段を上る時など普段よりも体を使う時に息切れを感じます(労作時呼吸困難)。進行すると安静にしていても息切れを感じるようになります。 - その他の症状
体重減少や、喘鳴、急に息切れが生じる発作性呼吸困難などといった喘息のような症状がみられることもあります。
慢性閉塞性肺疾患(COPD)の治療法
- 禁煙
最も重要な治療は禁煙です。気流の閉塞が軽度から中程度のときに禁煙することで、多くの場合、咳や痰が減少し、息切れが現れるのが遅くなります。また、病気のどの時点で禁煙を開始しても、ある程度の効果は期待できます。 - 症状の緩和
吸入気管支拡張薬は症状を抑えるのに役立ちます。吸入ステロイド薬は中程度から重度のCOPD患者や頻繁に急性増悪が起こる患者さんに用いられ、症状を軽減したり、COPDの急性増悪が起こる頻度を少なくしてくれます。また、COPDの急性増悪を予防するため抗菌薬を服用することもあります。
COPDが進行し、酸素レベルが著しく低下した患者さんには、酸素療法が導入されます。酸素療法を行うことで息切れが軽減され、生存期間を延長することができます。 - 支持療法
COPDが進行すると呼吸困難の症状により、運動能力や生活の質(QOL)が低下します。
このような状態を改善するためには、「呼吸リハビリテーション」と呼ばれる呼吸訓練や運動療法、栄養療法などを総合的に行うことが重要です。
間質性肺疾患
肺の間質に炎症が起こる病気で、肺胞のやわらかい壁の構造が壊され、壁が厚く硬くなるため、酸素を取り込みにくくなる病気です。
原因不明のもの(特発性肺繊維症)と、膠原病、喫煙、薬剤など原因が明らかなものがありますが、原因によって経過や予後、治療法が大きく異なります。
初期には無症状のことが多く、病状がある程度進行してくると動いたときの息切れや痰を伴わない咳が見られるようになり、風邪などをきっかけにして急激に病状が悪化し、死に至ることもあります。
間質性肺疾患の症状
- 呼吸困難
軽症の場合にはほとんど症状はありません。進行すると、階段や坂道を上った時に息切れを感じるようになり、さらに進行すると、着替えなどの動作でも息切れが出て、日常生活が困難になることもあります。 - 咳
多くの場合、痰を伴わない乾いた咳が出ます。
間質性肺疾患の治療法
- 薬物療法
現在治療効果が認められている薬剤として、副腎皮質ステロイド剤と免疫抑制剤があります。また、特発性肺線維症に対しては、抗線維化剤が使用されます。間質性肺炎にはいくつかの型があり、これらの薬剤が効きやすい型とそうでないものがあります。これらの薬剤には副作用も多いため、病状の進行が緩やかな場合には、薬剤を用いず経過をみる場合もあります。これらの薬剤のほかに、咳や痰が多い場合には、鎮咳薬や去痰剤を使用するなどの対症療法が行われることがあります。 - 酸素療法
血液中の酸素が不足して日常生活に支障が出る場合などに行います。自宅に酸素供給装置を設置して、酸素チューブを接続し、鼻から酸素を吸入します。外出時には小型の酸素ボンベを携行します。酸素供給装置は病院を通じて業者からレンタルが可能で、装置や酸素、装置のメンテナンス費などの費用は、医療保険が適応されます。
肺がん
日本人の「がん」による死亡者数の中で最も多い「がん」は肺がんで(男性1位、女性2位)、毎年7万人以上の方が肺がんで亡くなっています。
肺がんは喫煙との関連が非常に大きいがんであり、非喫煙者に比べて、喫煙者が肺がんになるリスクは男性で約4.4倍、女性で約2.8倍になります。
また、非喫煙者でも、周囲の人が吸っているたばこの煙にさらされること(受動喫煙)による肺がんリスクは約1.3倍になることが知られています。
喫煙以外にも大気汚染やアスベストなどへの曝露も肺がんの原因になり、元々、間質性肺炎や慢性閉塞性肺疾患(COPD)などがある方は肺がんを発症しやすいことがわかっています。
肺がんの症状
代表的な症状
- 咳や血の混じった痰
- 胸の痛み
- 息苦しさ
- 発熱
その他の症状
がんの発生した場所によっては、しゃっくり、しゃがれ声、顔のむくみなどが見られることもあります。
また、肺がんは他のがんに比べて比較的進行が早く、他の臓器に転移しやすいという特徴があります。
そのため、骨への転移による痛みや、脳への転移による頭痛、吐き気、けいれん、意識障害などが生じることもあります。
ですが、初期は全く無症状で、健診などで胸部レントゲン検査を行った際などに偶然に発見されることも少なくありません。
肺がんの治療法
肺がんの治療は組織型と病期をもとに、以下の治療法を単独、あるいは組み合わせて行います。
早期であれば手術、放射線療法、進行してくると抗がん剤による化学療法が主な治療法となります。
※専門の病院での、早期治療が重要となります。
- 手術療法
早期の非小細胞肺がんに対する治療の中心は手術です。現時点では治癒する可能性が最も高い治療法となります。 - 放射線療法
体の外から体内の病巣部に放射線を当てます。化学療法と組み合わせることもあります。 - 薬物療法
基本的には手術や放射線療法が適応とならない患者さんが対象になりますが、手術後に補助的に行う場合や、放射線と併用して行う場合もあります。
気管支炎
気管や気管支の粘膜が炎症を起こし、咳や痰が続く状態のことをいいます。
気管支炎は、持続期間によって「急性気管支炎」と「慢性気管支炎」に分類されます。急性気管支炎は数日から数週間単位で発症して、多くが自然治癒します。
一方で、慢性気管支炎は月単位・年単位で気管支の炎症が持続します。
気管支に炎症が起こる原因は様々で、細菌やウイルスのほか、喫煙やアレルギーなども原因となります。
気管支炎の症状
急性気管支炎
- 発熱
- 咳
- 痰
- のどの痛み
- 関節痛や倦怠感 など
慢性気管支炎
- 咳
- 痰
- 息切れ
- 体重減少 など
気管支炎の治療法
- 急性気管支炎
急性気管支炎の多くはウイルスが原因です。
ウイルスに抗生物質は無効なので、抗生物質は治療で必ずしも使われるわけではありません。基本的には一般的な風邪と同じで鎮咳薬や解熱剤、去痰剤などを使用した対症療法が主となります。 - 慢性気管支炎
慢性気管支炎に対しては、喫煙が原因となることも多いため禁煙することが重要となります。また、気管支を拡げる薬や炎症を抑える薬を用いて治療を行います。
症状が進行した場合には、酸素療法や呼吸リハビリテーションを行うこともあります。
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)とは、睡眠中に一時的に呼吸が止まってしまうことを繰り返す病気の総称です。
無呼吸のたびに本人はほとんど気付かない目覚め(身体は眠っていても脳は目覚めている状態)が起こり、質の良い睡眠を得ることができず、日中の眠気を引き起こします。
肥満で首まわりの脂肪が多い、舌が大きい、顎が小さいなどが原因で喉のあたりの空気の通り道が塞がることで起こる閉塞型と、脳で呼吸の命令を出す部分が異常をきたして起こる中枢型がありますが、ほとんどの方は閉塞型となります。
飲酒や喫煙、睡眠薬の使用などが影響することもあります。
※現在、検査体制は準備中となりますので、SAS専門の脳波測定(一泊入院可能な病院)への受診へおつなぎします。
睡眠時無呼吸症候群の症状
- 寝ている間に呼吸が止まる
- いびき
- 寝ている途中で目が覚める
- 不眠
- 疲労感
- 日中の強い眠気
- 集中力の低下
- 起床時の頭痛
睡眠時無呼吸症候群の治療法
肥満が原因の場合はまずダイエットをしてもらいます。
その他に、寝酒の禁止や禁煙といった生活習慣の改善、マウスピースの装着などの治療を行いますが、症状が強く改善が見込めない場合はCPAP療法(持続陽圧呼吸:continuous positive airway pressure )を行います。
CPAPとは、睡眠時に鼻マスクを装着し、専用の機械で圧を加えた空気を鼻から気道へ送り込むことにより上気道を広げ、睡眠中に気道が塞がることを防ぎ、呼吸が維持されるようにする治療法です。
日本では、無呼吸低呼吸指数(AHI)が20以上で自覚症状がある場合にCPAPの保険適用となります。